教えるではなく、共に学ぶ

第14回のゲストは、前回に引き続き、㈱BOOK代表取締役の樋口聖典さんです。これからの教育について語っていただきました。

クリエイティブな活動が教育を高める

ーークリエイティビティは教育によって高められると思いますか?

樋口:私はクリエイティビティを教育で高めるというより、クリエイティブな活動が教育を高めるのではないかと考えています。

社会の構造や生き方をクリエイティブな活動を通して学ぶという行為が、教育の中でのクリエイティビティの価値だと考えています。

クリエイティビティを高めることを目的にして意味がある人は、職業としてのクリエイターだけだと思います。

高柳:面白いですね。

私は、ディスカッションの場を論理的思考や表現力が高い子どもになることを目指して提供しているわけではありません。ディスカッションでは、自分が考えていることを言葉にしたり他の人の言葉に影響を受けたりして、自分からやろうという力が沸きあがります。

本人たちが、どこに意識を向けていきたいかを自分で育める場をすごく大事にしています。

自己理解が最優先

樋口:今日の社会では「自分を知ること」、つまり「自己理解」が最優先事項です。

高度経済成長期やバブル期は、やったほうがよいことの基準が明確にありました。

たとえば、工業製品を作るときに10年以内に工場を広げてどのようにして製品を拡大していくかを想像すると、これがほとんど当たる時代、計画しやすい時代でした。

ところが、現在はスピードが速く、未来が読めない時代になってきました。これまで求められていた枠の中で最大限のものを出すことよりも、枠をどれだけ超えることができるか、違う視点から見れるかという価値が相対的に上がっている印象を受けます。

高柳:仕組みの中でみんなが頑張ることがプラスだった時代から、仕組みの見直しなど、まったく違うアプローチが必要な時代になったということですね。「仕組みがないと動けません」という人にとって、苦しい時代だと思います。

樋口:私のイメージでは、時代が進化しているとかではなく、振り子のような感じなんです。

今は多様性の方に振っているように感じますが、どこかのタイミングで揺り戻しがくると思います。

現在は、完全にブレインストーミングの時代であると思っています。どんな価値があるのか、なるべくたくさん数を出すように社会から求められている感覚です。

高柳:アイデアを絞っていくときには、きっと葛藤が生まれると思います。

自分を理解していないと、自分にとって、何をゆずれて何がゆずれないのかが分からないまま、不安で動けなかったり、何となく嫌だからやめてしまうといったことが日常的に起こってしまうのではないかと思います。

やりたいことをやる時代

樋口:価値観も変わってきています。現在、ソーシャルビジネスが隆盛を迎えています。社会問題を解決すること、お金を稼ぐというより社会をもっとよくすることがよいとされていますが、この傾向は徐々に変わりつつあると考えています。

先日、高校生や大学生と話していたときに、「それをやって、社会に対して何の意味があるのか」と問いかけました。すると「よく分からないけど、やりたい」という答えが返ってきました。

自分のやりたいことが主軸になる時代が到来するような気がしました。

そうなると、やはり自分を知らないと幸せはつかめないと思います。世間に認められるかは関係なく、自分がやりたいことをただやるという時代になっていくのではないかと思います。

高柳:ディスカッション好きが高じて、私は会社をつくりました。ディスカッションが好き、楽しいと思う人を増やしたいという思いで活動し、現在はやりたいと思っていたことが仕事になりました。

今の話を聞いていて、もしかしたら次の世代はこの状況が当たり前になるのではないかと思いました。

教えるではなく、共に学ぶ

樋口:現在は、知識と経験と柔軟性でいえば、かろうじて知識と経験のほうが判断基準としての正答率が高い時代だと思います。

ただ、これからの時代は、柔軟性や新しい発想、熱意や行動力の価値が上がっていき、価値が逆転する時代になると思います。年長者は、自分の経験則を元に子どもたちにアドバイスをします。でも、その経験則はインターネットがなかった頃の話です。

私は大人が子どもに教える時代は終わると思っています。

高柳:私が教育に関して強く思っていることは、大人は子どもと一緒に学び、議論したほうがよいということです。教えるのではなく共に学ぶことをDコートでも大切にしています。

私は、「人類みな同級生」というモットーを持って、人と接するようにしています(笑)

樋口:最近、私は高校生3人とバンドを組みました。メンバーとカラオケに行く機会があったのですが、歌っている歌をほとんど何もしりませんでした。情報の違いにより、全くついていけていないと感じました(笑)

高柳:まさに、共に学ぶですね(笑)今日は、ありがとうございました!

樋口:今後もたくさん議論をして「自分とは何か」という部分を自分で気づいていくことができればいいと思います。ありがとうございました!


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