第4回「大学教育の現場から考える未来の教育」(ゲスト:阿比留正弘)【前編】

「未来の教育を語る」第4回のゲストは、福岡大学で「ベンチャー起業論」を主宰している 阿比留正広教授です。Dコートの高柳は、ベンチャー起業論卒業生。阿比留教授との関わりの中で起業のきっかけを掴んだ一人です。今回はそんな二人で未来の教育を語ります。前編は、「今企業が必要とする人材」について。

株式会社ビッグトゥリー 

代表取締役 髙柳 希

ディスカッション好きが高じて起業。ディスカッションを基軸とした独自の教育プログラムを開発。

福岡大学 経済学部 

教授 阿比留 正弘

「ベンチャー起業論」を主宰。学生主導の運営で、実践的で主体的な学びの機会を創出。

 


ーーまずは二人の自己紹介をお願いします。

 

阿比留:福岡大学で学生たちへ経済学を教えています。高柳さんは法学部ですが、僕の授業を受けてくれましたね。

「ベンチャー起業論」という学生が主体的に運営する授業です。

 

高柳:ずいぶん前のことですね(笑)でも、あの時発表したビジネスプランが、今やっている子ども向けのディスカッションスクール「Dコート」になっています。学生時代が今の私の土台になっています。

 

阿比留:大学時代から高柳さんはチャレンジ精神が旺盛でしたね。

高柳さんは法学部なのに、よく僕の研究室を訪ねて来ていたし、ビジネスプランコンテストで「優勝します!」と宣言していましたね(笑)

 

高柳:そうでした!当時、つたない事業計画の数字に「それじゃビジネス成り立たないよ」と他の教授からご指摘を受けました。

阿比留先生は「彼らは頑張っているから、これでいいんです」とフォローしてくれました。あれは本当に嬉しかったな!

 

阿比留:覚えてない(笑)

 

ベンチャー起業論は「私がやりたいこと」を見つける授業

ーー なぜ「ベンチャー起業論」という授業をはじめたんですか?

 

 

高柳:「べンチャー起業論」は現在20年目くらいですか?学生主体で企業とコラボレーションしながらビジネスプランをつくる、というのはとても斬新な授業に思えました。

 

阿比留:はじめたのは僕が当時講義をやっていて面白くなかったからですよ(笑)ものすごく面白くなかった。

 

高柳:先生が講義する姿は確かに想像できないです(笑)

 

阿比留:なぜ面白くなかったかというと、学生が寝ていたり、他の人と話したり、

一生懸命講義を受ける人が少なかったのです。「なぜ彼らは高い授業料を払ってこの講義を受けているのだろう?」と不思議でなりませんでした。

そんなとき、放課後にサークルやクラブ活動でイキイキしている学生の姿を見て気づきました。

 

高柳:私も身に覚えがありますね。確かに夢中でサークル活動していました。

 

阿比留:クラブ活動では年間を通じて発表会や演奏会など、さまざまなイベントがあります。

そして2年生が中間管理職、3年生がリーダー、4年生が相談役のような役割でそこに先生はいません。

このように「学生が役割と責任を持つ場が大切なんじゃないか」と思ったんです。

 

高柳:ベンチャー起業論も学生主導で運営されていますね。学生代表を中心に事務課や評価課といろんな課があり、

その中でプロジェクトが行われている。私の時代は、授業の単位に相当するオリジナル通貨の制度までありましたね(笑)

 

阿比留:懐かしいね。ベンチャー起業論は会社の組織構造に似ていて、その中で学生は「やりがい」や「自分の価値」を見つけていくことができる。それに、ここでは単にプロジェクトを成功させるだけでなく、「失敗できる場でもある」ということが大切です。僕は、間違えても怒らないからね。

 

高柳:私も当時は「ビジネスプランコンテストで優勝する!」と意気込んでこの授業へ入りました。

 

阿比留:そういう目標を持って入る生徒は多いですね。高柳さんは法学部で、本来は僕のゼミ生でもないからね。いわゆる「よそ者」ですよ(笑)

 

高柳:完全にそうでしたね(笑)1人で乗り込みました。

 

阿比留:でも、そういう人こそ頑張るんですよね。今でも、九州や全国のビジネスプランコンテストへ出て賞をとる生徒は他学部が多いです。他学部だと僕の授業でもらえる単位もずっと少ないのですが、単位のためではない強さがありますね。

 

高柳:先生は「君は何がしたいの?」が口ぐせでしたね。

本当に自分がやりたいことを問われる機会なんてほとんどなかったので、最初はびっくりしました。

 

阿比留:僕は生徒を一人の人間として見ています。僕たちは世界に一人しかいないじゃないですか。隣の人と同じことを考えているわけないんです。だから聞くんですよ。「何がしたいの?」ってね。

 

人口が100万人づつ減っていく時代へ

ーー社会では今、どのような人材が必要とされているでしょうか?

 

阿比留:それを考えるには背景、「人口の減少」をまず知ることですね。

日本の人口動態を西暦800年ごろから見てみると、2000年から2014年で、1億3000万人のピークを迎えています。

ここから2100年には5000万人に減少すると予想されています。

 

高柳:わぁ、なんだか学生に戻って先生の話をきく気分(笑)

人口動態の図を見ると急速に増えたように見えます。

 

阿比留:そう、そして今後は急速に減る。移民の受け入れなど別の方法がない限り増えません。

僕は人口が増えていた時代に生まれました。小学1年生のころ電気が初めてつきました。

それからラジオやテレビ、洗濯機に車、あらゆる便利なものが現れます。大量生産、大量消費の時代でした。

企業の生産が追い付かないほど、商品が売れて売れて売れまくっていましたよ。

 

高柳:それは大きな変化ですね。「売れに売れる」私には夢みたいな状況です。

 

阿比留:そうするとね、人手が必要。でも、必要なのはとにかく「言われたことを真面目にやれる人」です。

マニュアル通りつくって、マニュアル通り売る人です。

 

高柳:確かに「商品が足りなくてドンドン売れる!」となれば考えるよりもとにかく動くことが重要ですね。

「これでいいのかな?」なんて立ち止まる時間はもったいないですし。

 

阿比留:しかし、今まで疑わなかった人口の増加が、緩やかになり、そして横ばいに。

このままでは「売れ残り」が出ることに気づき始めます。

バブル崩壊ですね。1989年から2010年くらいまでが空白の20年です。

 

高柳:そこに生まれ育ったのが私たち世代です。

 

阿比留:多すぎる人材を切るか、海外にマーケットを求めるか、なんとか打開策を考えなければならない。

しかし、目の前にはとにかく上司の言うことをよくきく人材ばかりがたくさんいるわけです。

 

高柳:時代の変化と同時に、ビジネスで求められる人材が変わってしまったんですね。

 

阿比留: 今、必要とされる人材は考え、生き残れる人材です。新人やベテランも関係ありません。

トップの意見ではなく、各自で「儲かるとは?」「顧客のニーズとは?」を考えることができる人材が求められます。

それに加えて、AI(人工知能)の普及に伴って「人間らしい答えを出す人」も求められるのではないでしょうか。

 

高柳:「人間らしく考えて生き残れる人材」ですか。先生のいう「人間らしい」とはどのようなことを指すのですか?

 

阿比留:とてもいい質問だね。僕はそれをイノシシから気づきました。

ランニングが趣味でね、山を走っていると時々イノシシに会うんですよ。

そんなとき「イノシシと僕、どちらが偉いのかな、勝てるのかな」と考えるんです。

 

高柳:面白いですね。

 

阿比留:人間にとって大事な能力って衣食住に関することだと思うんです。

僕は気候に合わせて服を買う、着る、でも目の前のイノシシは自分の毛皮一枚です。

これは、負けていますね。

 

高柳:負けていますね!(笑)そうすると、食も住も、イノシシに負けませんか?

 

阿比留:そう、イノシシは一銭のお金も使わずに衣食住を確保するんですからね。

人間を自然の中に置いては完全に負けてしまうんです。

人間が勝っているとしたら、それは文化であり歴史であり知恵に支えられたものなのですよ。

 

高柳:それは、どういうことでしょう?詳しく教えて下さい。

 

阿比留:つまり、長い歴史でつくられてきた道具、生活、人の関わりに支えられているということです。

このコップひとつとっても作った人や運んだ人がいます。

そういった文化を背景に、人に支えられ、支えているということを受け入れて、はじめてイノシシに勝てるんです。

まさに、人間は社会的動物です。

 

高柳:AIと比較するよりも、イノシシと比較したほうがより人間らしさがわかるような気がしますね(笑)

 

阿比留:私たちは「一人でいいんです」ではなく、人と関わり、認め合い、コミュニケーションをとって生きていく。

そういうことが人間らしく大切なんだと思います。

 


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